当時、私はパリ16区に暮らし、子どもを産んで間もない頃でした。
ある日、フランスのテレビで日本の「蒔絵」を紹介する番組を目にしました。
漆の上に描かれる繊細な文様。
金や銀の粉によって生まれる独特の輝き。
そして、それを生み出す日本の職人たちの技。
その美しさと技術の素晴らしさに、強く心を動かされたのが、私と漆との最初の出会いです。
私は20代前半から、長年グラフィックデザインの仕事をしてきました。現在はWebやSNSなども含め、パリへの進出を目指す方のトータルブランディングにも携わっています。
そんな私は、デザイナーもまた、ある意味では職人なのではないかと思っています。
デザインは、一度技術を身につければ終わる仕事ではありません。新しい知識や技術、そして時代に応じた感覚を絶えず身につけていく必要があります。
そして長年デザインをしていると、ほんのわずかな違いで、それまで何かが足りなかったデザインが突然輝き始める瞬間があります。
肉眼ではほとんど分からないような、0.1mmほどの違い。
それでも、そのわずかな調整によって全体の印象が変わることがある。
そんな経験を何度もしていると、これはもう「職人」の領域なのではないかと感じることがあります。
だからこそ私は、長い年月をかけて一つの技術を磨き続ける職人という存在に、昔から大きな尊敬を抱いてきました。
そして、私が長く暮らしていたパリは、職人―フランス語でいう artisan(アーティザン)―の仕事や技術に敬意を払う文化が息づいている街でもあります。
そんな場所で目にした、日本の蒔絵。
私には、その技術がそれはそれは美しく、眩しいほどに輝いて見えました。
そして真っ先に思ったのです。
「なんで私は、日本にいた時に蒔絵を学ばなかったんだろう。」
そこで私は、フランスで蒔絵を学べる場所を探し始めました。
しかし、当時の私には、本格的な蒔絵を学べる場所をフランスで見つけることができませんでした。
その後、日本へ帰る機会に、蒔絵や本格的な漆の技術を知りたいと、大学や専門学校、漆に携わる職人や作家のもとなど、さまざまな場所へ足を運ぶようになりました。
このブログでは、そんな私が実際に訪ね、見て、学んできたことを少しずつご紹介していきたいと思います。
これから金継ぎや蒔絵を始めたい方、そして日本の漆文化についてもっと深く知りたい方にとって、少しでも参考になれば幸いです。




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